「華を織る」
03
「そうですねえ、貴方を人質にして金品を頂戴するとか?」
虹の動きを油断無く見据えつつも、蒼川はふうむ、と考え込む様に首を傾げる。「――それともいっそ、そのお命頂戴するとか‥‥?」
常人であれば顔を強張らせる様な凄惨な笑みを浮かべてみた蒼川だったが、しかし虹は相変わらず明るく微笑んでいるだけだった。
「まさか。海の申し子たる銀髪の御仁が、丸腰の相手を手に掛ける事なんてありえませんね」
そのまま歩調を変える事無く応接机まで辿り着いた虹は、置かれていた茶器に手を伸ばすと蒼川の方を振り向いた。
「立ち話も何ですし、取り敢えず翠茶でもどうですか?」
丁度、家の者が用意したばかりなんですよ。そう言いながら椅子を勧める虹に、蒼川もまた礼を述べつつ虹に相対する席へ腰掛ける。
「‥‥最近、黒い瞳の小鳥を一羽、捕獲したそうで」
「ああ。あの小鳥でしたら、当館で保護させて頂いてますよ」
「そろそろ解放願おうかと思いましてね」
「何故です?」
「何故、とは?」
心底不思議そうな表情を浮かべる虹に、蒼川もまた疑問を投げ掛けた。
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