「華を織る」
06
この人が。
本当の兄なら良かったのに。
ふいに沸き起こった思いを、宮古は苦い物を呑み込む様にぐっと心の底へと封じ込める。
この溢れる情愛も。
尽きせぬ思慕も。
身を切るような熱情も。
全てを『血の繋がり』という理由に昇華してしまえれば、どんなにか楽だっただろう‥‥若しくは全くの赤の他人であったならば、どんなにか。
「‥‥」
――姉さん。
喘ぐ様に心の中で呟いた呼び掛けは。
しかしその後に続く言葉を見付ける事が叶わず、宮古は強く奥歯を噛み締めた。
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