「華を織る」 05 「やっぱり来てたんだ、叔父さん」 「やっぱりって?」 「父さんがそう言ったの。『今日は宮古は休みだから、母さんの処にいるはずだ』って」 「――ほら、当たっただろう?晴海」 「、」 再び背後から響いた穏和な声に、宮古は慌てて顔を上げた。 その視線の先に居るのは、普段着姿の静剣・清水。眼鏡の奥の目を柔らかく細めながら、娘と義弟の遣り取りを眺めている。 「‥‥義兄さん」 職場では称名を呼び他の四剣と同じ様に接しているが、私的な空間では家族の間柄に戻る宮古である。 公私は分けるべきだと頑なに切り換える宮古に、清水は「宮古らしいね」と微笑んだものだった。 「義兄さんも今日は休みでしたか」 「うん。宮古の部屋に誘いに行ったんだけど、もう出た後でね。急いで追いかけたんだ」 「すみません、一度、顔を出せば良かったですね」 「違うの叔父さん。本当はまだ部屋に居る時間に行く予定だったのに、父さんが寝坊しちゃったのよ」 「ごめん、昨夜はちょっと夜更かししてしまってね」 「本当に父さんは朝に弱いんだから」 「母さんには言わないでくれよ?」 「ふふふー、どうしようかなー」 弾むように続いてゆく会話に宮古は微笑を誘われながらも、それまで占めていた墓石の面前を父娘に譲る。 「ありがとう、宮古」 「ちょっと待っててね、叔父さん」 途端、申し合わせた様に神妙な表情となり、一心に墓石を見詰め出す二人の背中を、宮古は黙って眺めていた。 ‥‥正解には、義兄の背中を。 「‥‥」 [*前][次#] [戻る] |