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「華を織る」
08

 麻乃は呟くように繰り返す。
 とは言えこの薬草は、知り合いだからと言って簡単に分けて貰えるような代物ではない。
 薬草類に全く興味が無くても、少し調べれば自ずとその貴重さが分かるはずだ。希少価値としても、金銭的価値でも。
 その上でなお手放すという事は、薬草を当てにする必要の無い者か、余程蒼川の身を案じている者か。


 桜木から「蒼川は顔が広い」と意味深長な笑みと共に聞いた事はあったが、確かに千差万別のようだった。
蒼川殿自身も高嶺の花なのですね‥‥そう思った瞬間、微かに麻乃の胸を痛みが走る。が、珍品を目にした興奮が忽ち掻き消していった。


「それで、これはどうやって使うのですか?」
「茶葉と共に煎じたり、揉んで直接患部に貼ったりします。傷薬の親玉ですよ、瀕死の重傷も大概は治ります。千切れた腕や足がくっついたという事例もあるぐらいです」
「ふうん、確かに俺達のような生き方をしている者には『役に立つ』」
「いえ、別に役に立たせなくても良いのですよ?使わないに越した事の無い薬草ですから。厄除けにもなりますし」


 取りなすように慌てて言い、麻乃が蒼川の手へと薬草を返そうとしたところ。
「麻乃殿、」
 反対に、やんわりと両手で包まれた。
「これ、貴方にお預けしても良いですか?」
「こんなに貴重な薬草を、ですか?」
「いつか、うちの誰かが、これの必要になるような傷を負うかもしろません。その時までお願いします」
「しかし、」


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