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「華を織る」
03

 瞬間、呪縛が解けたように自分の役目を思い出し、麻乃は弾かれたように蒼川から目を逸らした。
『申し訳ありません、宮古殿が来られるかと思っていまして』
『宮古はずっと桜木と行動を共にしていましたから、うつっている可能性もあるかと思いまして。念のため、健康体な俺が来ました』
『そう、ですか』
『ええ、天下の国立図書館に風邪を蔓延させてはいけませんしね』


 淀み無くにこやかに答える蒼川の姿は、あくまでも礼儀正しく、寸分の隙も見当たらない。
 まるで、先日の謎かけの様な会話が幻だったかのような錯覚に、麻乃は陥る。


『桜木の様子はどうですか』
『宮古に三日間の自宅謹慎を言い渡されてましたよ』
『酷い状態でしたからね。それに宮古殿は心配性ですから』
『ええ、桜木には良く出来た副官です』
『本当に。彼が居るから安心というものです』
『入りたての連中は、あの剣幕にびびってますがね』


 最初から最後まで姿勢を崩す事なく薬を受け取った蒼川は、麻乃に触れる事無く、窓際で優雅に一礼すると静かに去って行ったのである。




 次の日も。
 その次の日も。






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あきゅろす。
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