「華を織る」
01 ◆2◆
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かつん、と屋外から微かに響いた物音に、麻乃は薬草辞典を捲る手を止めた。
軽く首を傾げた後、数刻前から麻乃の手元を仄かに照らし続けている小さな燭台を取り上げると、窓辺へと歩み寄る。
図書館の裏庭に面した掃き出し型の背の高い窓を開け、吹き付ける風の思いの外の強さに亜麻色の髪を押さえつつ周囲を見渡すが、特に異変は見付からず。
――大方、風に煽られた小枝か何かが窓に当たったのでしょう。
心の中で結論付けると、無意識の内に詰めていた息を小さく吐き、‥‥ふと麻乃は指先を戸惑わせた。
窓を隅々まで覆う鎧戸へと腕を伸ばし掛け、暫し迷った挙句、日除け用の薄布を被せるだけに留める。
現在の麻乃の部屋の状態は、窓の外からは室内の様子は伺い知る事は出来ない、しかし洩れる燭台の灯りから在室である事は見て取れる、という案配だ。
太陽が沈んで久しい寒夜の下、防寒という観点からも鎧戸は閉じた方が賢明なのだが。
「‥‥」
――何をしているのでしょうか、私は。
俯きがちに壁へ凭れ掛かると、頬に落ちかかる髪を耳にかき上げながら、麻乃は深い息を吐いた。
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