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「華を織る」
04

 朗らかに、しかし有無を言わさない口調で懇願され、宮古は遂に口を噤んだ。



 何時もそうなのだ。
 普段は暢気で茫洋としているこの上司に、肝心な処で宮古は何時も負けてしまう。その願いを聞き入れてしまう。
 ‥‥結局のところ私は彼に甘いのか、と内心深い溜息をつく宮古である。



「勝負あったね、宮古」
「‥‥静剣」
 近寄って来た清水に肩を優しく叩かれ、宮古は戸惑い気味に振り返った。
「大丈夫、うちの副官を手伝いにつけるから。お前は安心して休みなさい」
「‥‥はい」


 義兄にまで穏やかに諭されては、宮古と言えども素直に頷くしかない。
 漸く大人しく従う素振りを見せた副官に、桜木は余裕の表情を浮かべながらもやれやれと胸を撫で下ろしていた。
 上司である以上、休暇命令を出せばそれで終りなのだが、桜木の性格上、其れは極力避けたかったのだ。
「――では華剣、こちらが処理済の書類です。この綴りは今回の報告書になるので、確認をお願いします。それから、」
「宮古」


 それならばと素早く気を切り替え、引き継ぎを行おうとした矢先、宮古は桜木に腕を引っ張られた。
 勢いで傾げられた宮古の耳許に、笑みを浮かべながら桜木は唇を寄せる。
「清水の言葉にはやけに素直だな、宮古」
「!華剣、悪ふざけはっ」
「どうしたの?宮古」
「い、‥‥いえ、何でも、」




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