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「華を織る」
02


 強い口調で告げながらも、仕事好きな上司としては2日休んだだけでも上出来だな、と宮古は内心判断する。
 奪還作戦が正式決定して以来、ほぼ無休状態だった桜木の身心を心配した上での、風邪に託つけた休暇でもあったのだ。
 滅多に疲労を面に出さない桜木だったが、今回は風邪も上乗せされ、流石に些か疲労の表情を滲ませていた。
 その顔から翳りが消えた分、最低限の休息は取れたように思われる。


「良いじゃないか。ほら、声も出る事だし」
「まだ掠れてますよ」
「聞き取れるだろ?咳も出てない」
「ですが、」
「何より俺はもう、此処へ来てしまっている。今更追い返すのは無し、だろう?」
 どうだ?と悪戯っぽく笑う桜木を軽く睨んだ後、暫く後に宮古は諦めた様に溜め息を付いた。


「‥‥仕方ありません。追い出した挙句、城内の方々に御迷惑を掛けるわけにもいきませんし」
「では、副官のお許しが出た処で。――ちょっと待て、宮古」
 渋々といった表情で頷き、自席に重ねてあった書類に手を伸ばそうとした宮古に、しかし今度は桜木が制止の声を上げる。


「何ですか、華剣」
「兵達の休暇の取得状況は?」
「基本は4日、家が遠い者は適宜延長しています」
「全員取るように徹底したか」
「はい。交代制を取り、各部隊へも応援を要請してあります。予定表は全班長から提出済です」
「では、まだ取る予定が出来ていないのはお前だけ、と言う事だな、宮古」
「私、ですか?」



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あきゅろす。
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