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「華を織る」
01 ◆1◆

◆1◆


 その日。
 常と寸分違わす同じ時刻に詰所へ到着した宮古は、きびきびと廊下を歩きながらも妙な違和感を感じていた。
 と言うのも、すれ違う剣士達が皆、宮古の顔を見た瞬間、微かに強張った何とも言えない表情を浮かべるのである。
 舞剣・蒼川などに至っては、朝の挨拶よりも先に、意味深長な笑顔で「大変だな」と労りの言葉を投げてくる始末。


「‥‥」
 私が何をしたと言うのか。
 内心首を捻りながらも表情は完璧な冷静沈着を纏いつつ、剣士用詰所二階、自席のある部屋の扉を開けた瞬間。


 宮古は、総てに対して漸く合点がいった。


「やあ、おはよう、宮古」
「‥‥何故、此処にいらっしゃるのですか、華剣」


 柔らかに降り注ぐ朝日を浴びながら、にこやかに笑い掛けてくる上司に対し、宮古は北雪国の山岳凍土をも下回る冷やかな声を出す。
「私は3日間、と申し上げたつもりでしたが。まだ2日しか経っていないのは私の勘違いでしょうか」


 桜木の愛想の良い挨拶も歯牙に掛けず、周囲の窺うような視線も黙殺し、ひたりと睨み付ける。‥‥勿論、剣士達が引きつった表情を浮かべていたのは、この一触即発の事態を想定していたからだ。
 恐ろしく堅物な鬼副官と、暢気に我が道を往くお気楽指揮官。
 最早名物と成りつつある両者の遣り取りだが、それでも宮古の迫力に周囲の者達は毎度首を竦めずにはいられない。


 しかしながら、その鬼副官に対し剣士達から全く不満が出ないのは(むしろ密かに人気を集めている)、その怒りが至極真っ当であり、また相手を思い遣った挙句の言動だという事を、皆が承知している為だった。
 何のかんの言いつつも、結局の所、桜木を最も敬愛し信頼しているのは宮古自身なのである。
「残り1日です、大人しく自宅療養なさい。華剣」




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あきゅろす。
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