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「華を織る」
05


「あ、あの、ちょっ、ちょっと待っ、今、おいしゃさ‥‥」
 慌てふためきながら医師を呼びに行こうと踵を返し掛けた亜紀だったが、その指先を桜木は先程何とか持ち上げた手で強く握り締めた。そのまま渾身の力を込めて――常の力と比べればその何十分の一の弱さではあったが――亜紀の身体を引き寄せる。
「、え?」
 激しく動揺している上に不意打ちまで食らった亜紀は、寝台に横たわる桜木の上へ倒れ込んだ。


「さ、桜木様?」
「ごめん、亜紀」
 今自分に出来る精一杯の力を込めて、桜木は亜紀の背中を抱きしめる。ああ、ようやくこの身体に触れる事が出来る。躊躇う事無く、思う存分に。「――あと、ありがとう」
「‥‥お礼を言うのは俺の方なのに、桜木様」
 桜木の胸に顔を埋めたまま、亜紀はくぐもった声で辛うじて呟く。
「ありがとうございます、桜木様。あそこまで来てくれて。‥‥俺を見つけてくれて」
「決めたんだよ、俺が亜紀を護るって」


 そう、決めたのだ。多分、初めて会った瞬間に。
 この少年を護ると。彼に仇なす全てから。彼が永遠に目を閉じその日まで。
 何があっても俺が護ると決めたのだ。
「本当にありがとうございます。あの、何かお礼が出来れば良いのですが」
「礼なんていらないよ」
「でも、」
「じゃあ、笑ってくれないか?亜紀」



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