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「華を織る」
06



「‥‥何をしている、蘇芳神官」
 呆気に取られ静まり返っていた会議室だったが、やがて逸早く立ち直った赤の神官長が溜息混じりに呟いた。とは言え部下の無鉄砲な性格は熟知している為に、その顔には苦笑気味の表情も浮かんでいたのだが。
「お前だ、浅葱神官」
 青の神官長も続いて言葉を発する。こちらは少々変わり者とは言え普段は素行に全く問題の無い浅葱の意外過ぎる暴挙に、些か戸惑い気味の様子だ。


「浅葱神官には、まだ話したい事があるそうです」
 浅葱を庇う様に一歩前に進み出た蘇芳が、大卓を取り囲む重鎮連をぐるりと見渡しながら声を張り上げる。「――聞きたい事だけ聞き出したら、話半ばで追い出したそうじゃないですか」
「話?何の事だ。追い出したとは心外な」
「もう浅葱神官から聞く事は何もない」
「それより無礼を詫びないか、蘇芳神官」
「神聖な会議に乱入するとは前代未聞だ。今すぐ部屋で謹慎を」
「‥‥人の話を途中で無視して切り上げるのと、どっちが無礼だよっ!!」


 途端、堪忍袋の緒が切れたとばかりに吠えた蘇芳に対し、神官達の間に動揺に近いざわめきが走った。それは糾弾内容に対しての怒りと言うより寧ろ、配下の者から異を唱えられた事への純粋な驚きに近いものだった。
「口を慎みたまえ蘇芳神官!」
「今すぐこの場から出て行くんだ!」
「赤の神官長、部下の教育はどうなっているのかね?」
「、うちの神官長は関係な‥‥」



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あきゅろす。
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