[携帯モード] [URL送信]

「華を織る」
04


◆◆◆◆◆


 大神殿の奥深く、小規模ながらも重厚な装飾が施されている会議室は、その設えに相応しく重苦しい空気に包まれていた。
 難しい表情を浮かべ中央の大卓を取り囲むのは、各色の神官長を始めとする大神殿の中枢を担う面々。扉の前には何人も通さない様に言い聞かせられた側近の部下達が複数人陣取っている。
「水晶の剣が光ったらしいな」
「織子の再来とは、本当か?」
 水晶の剣が光を放ったあの日、浅葱と蘇芳だけでなく偶然近くを通りかかった幾人かの神官にもその輝きは目撃されていた。
 興味津々の蘇芳と異なり生真面目で従順な目撃者の面々は上司へと報告し、すぐさま事情を知るであろう浅葱が招集された。浅葱もまた抗う事無く淡々と事情を話し――黙秘してもいずれ知られる事は分かっていた――緊急会議が開かれているのである。


「件の少年は如何しましょう」
「慎重に真偽を確かめねば」
「まずは我等で急ぎ保護を」
「一時的ですが西風に拉致されていたそうですし」
「手遅れになる前に、即刻使者の手配を」
 織子再来については半信半疑ながらも、水晶の剣が光ったのは複数の目撃情報から言って紛れも無い事実である。織子の力であれ何であれ、神の創造物に何らかの変化がもたらされた事は、神に仕える者達にとって由々しき一大事であった。
 全ては迅速に、そして慎重かつ秘密裏に行わなくてはならない。これ以上人々に知り渡る前に。権力者の目に留まる前に。


「‥‥しかし、とんでもない火種が出て来たものだな」
 会議も終盤に差し掛かり、緊迫していた場の雰囲気もようやく緩み始めた頃、一人の神官が深い溜息と共に誰とも無く呟いた。
「火種、とは?」
「あまり穏やかでは無い言い方ですな」
 些か過激な表現に幾人かの神官が顔を顰める中、考えてもみたまえと先の神官が一同を見渡す。



[*前][次#]

13/35ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!