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「華を織る」
02


 工房織人で推論した「天の織子再来」の話が頭の片隅から離れなかった麻乃だったが、超常では無い事が分かり安堵の息を吐く。――良かった、亜紀は亜紀のままなのですね。
 あんな話し合いのあった後で急に亜紀の目が見える様になったのだ。もしや織子の力が影響しているのではないか、織子が乗り移ったのではないか、このまま亜紀が亜紀では無くなるのではないか‥‥そんな漠然とした不安があった。
「亜紀。辛い目に遭ったのでしょうが、目が見える様になった事は本当に良かった」
 立ち上がり亜紀の方へと歩み寄りながら、麻乃は笑みを浮かべる。「――工房の方達も喜んでらっしゃるでしょう?」
「はい!‥‥あ、でも、喜ぶと言うよりも大騒ぎ、かなあ」



『おおおああああああああきが!!』
『おおおおおめめめめめめめが!!』
『めがめがめあめがめがあああ!!』
『めがあきのめがあきのめのあきが‥‥おや?』
『‥‥少し落ち着いて下さい、翁方』



 西風から帰って来た日、無事の帰宅を大喜びで迎えた老織師達は、次の瞬間、亜紀の目が見える様になったという状況に対し、恐慌と言って良い程の大混乱に陥ったのであった。
「まあ、落ち着いてからは、妙に納得していたみたいですけど」



『確かに、亜紀は時々見えているみたいな動きをする時があったぞい』
『もしかしたら、身体の方は「見えている」事をこっそり分かっていたのかもしれないのう』
『無意識とでも言うのかのう?きっと意識の下の方では、ちゃんと見えていたんじゃろうて』
『ま、こんな老いぼれ達には、難しいことはとんと分からんがのう』
『‥‥ともかく、見える様になって良かった、亜紀』


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あきゅろす。
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