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「華を織る」
07

◆◆◆◆◆


 東雲が誇る東の剣の詰所は今日も変わらず多くの剣士が行き交っていた。あるいは締切間近の決裁書類を慌ただしく抱え、あるいは練習試合の興奮冷めやらない様子で汗を拭い、あるいは‥‥常にも増して鬼気迫る様相で机に向かっているのは。
「宮古副官、今日は一段と恐ろしいな」
「ああ。‥‥まあ、華剣がまだ‥‥なあ?」
 廊下を歩きながら囁き合う若い剣士達は、通り掛かった扉からその背中を――黙々と書類を片付け続ける宮古の背中を、恐る恐る覗き込む。


 ‥‥桜木の昏睡に関しては、伏せるべきか報せるべきか残りの四剣及びその副官の間で議論になったのだが、最終的に「剣士達と天帝以下幹部にのみ報告する」という事で決着が着いていた。
 とは言え西風に忍び込んだ経緯に関しては四剣・副官の内に留めておき、ただ単に「休暇先で罹患した高熱により意識不明」と言う説明がなされている。
 当初は頑丈な肉体と強靭な精神力を有する桜木の回復について疑問に思う者は皆無だったが、幾日も芳しくない報告が上がるにつれて、ほんの僅かではあるが剣士達の間で危惧する囁きが広まりつつあった。


「華剣、まだ目を覚まさないんだろう?」
「あの御方は強い、必ず復帰なさるさ」
「しかしこう何日も眠ったままだと言うのも、なあ?」
「万一に備えて、念の為に次の華剣を選出しておいた方が‥‥」
「馬鹿野郎!!桜木様以外の華剣なんて、俺は認めないぞ!」



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