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「華を織る」
03

「‥‥だと良いんだが」
 再び苦い表情に戻りながら、桜木は卓に頬杖をついた。蒼川もまた同様に考えたらしい、背凭れから身を起こすと宮古の方へと視線を投げる。
「神話には続きがあっただろう宮古。欲を出した王はどうした?」
「‥‥」


――『恩恵をもたらす布ならば、反対に災厄も引き起こす事が出来る』
  『その力で南方大陸を疲弊させれば、侵略も夢ではない、と考えたわけさ』



「‥‥まさか、南方大陸を?」
 国境の峠で矢崎から聞いた昔語りを思い出し、半信半疑といった表情を浮べる宮古に、その通りと蒼川は頷いた。
「国を復興するには産業を盛んにすれば良い。しかしそれだと時間が掛る。短期間で豊かになるにはどうすれば良い?――結論、豊かな場所から奪えば良い」
「しかし、あの南方大陸ですよ?西風が到底敵う訳無いじゃないですか」
「それなら南方大陸は諦めて、手近な東雲辺りでどうだ」
「どうだって言われましても、‥‥って、ふざけないで下さい、舞剣」
「本気だよ、俺は」


 不謹慎ですよと眉を顰める宮古に臆する風も無く、蒼川は再び頷いた。
「確かに南方大陸は魅力的だが、その前には海が広がっている。一方の東雲は同じ大陸、国力はそこそこながらも目と鼻の先。ああ、資源豊富な北雪でも良いし、温暖な南波でも良いね。さぁて、何処を選びましょう?」
「ですからふざけるのもいい加減に、」
「いや、強ち冗談でもないぞ、宮古」
 呆れ果てた様子の宮古に対し、桜木は頬杖をついたまま軽く首を横に振った。
「まだ四国に割れていると言うのに、織子の力を持つ少年が現れたんだ。と言う事は、そろそろ神の怒りが治まるのか?いやむしろ、一国に纏めろと言う啓示なのか?――と考えてもおかしくないだろう」
「そんな無茶苦茶な。飛躍しすぎです。大体、この四国を一国に纏めるだなんて‥‥」



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