[携帯モード] [URL送信]

「華を織る」
02



「そう。君は本来、この国の人間な‥‥」
「‥‥でも私は、東雲で産まれて東雲で育ちました」
 虹の言葉が終わらないうちに、その声に被せる様にして亜紀は心もち強い口調で言い切った。
 幼い頃は両親と。そしてあの事故以降は織人の工房で、皆と一緒に力を合わせて暮らしてきた。東雲の中心地、平和な活気溢れる都城の城下町の一角で。「――だから私は東雲の人間です」


「――分かった、とりあえず君は東雲の人間という事にしよう。その上で、私の提案を聞いてくれないかい?」
 最初から闘志を隠そうとしない亜紀に対し、虹は微風を躱す日除け布の様にゆったりと頷くと、まずは座って貰えないかな?と着席を勧める。
 少し気勢を削がれた感じになった亜紀だったが、手を伸ばし応接椅子の背を掴むと慎重に腰を下ろした。気を取り直す様に、再び虹へと視線を向ける。


 その意志の強そうな眼差しに、虹は楽しげな笑みを浮べながら白夜をちらりと振り返った。顎を引く様に小さく頷く白夜に対しもう一度微笑むと、改めて亜紀へと向き直る。
「亜紀。君は織子の再来なんだよ」
「‥‥」
「君の織った布には、特別な力が籠められているんだ」
「‥‥」




[*前][次#]

39/58ページ

[戻る]


あきゅろす。
無料HPエムペ!