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「華を織る」
08


 ――これで終わりだ。
 ともかく自分の右腕を、そして仲間達を奪ったあの化物は異国の地で囚われの身となった。ある意味、復讐を果たせたと言っても良いだろう。
「‥‥」
 男は動く方の手で、懐の袋をそっと撫でる。
 気前の良い雇い主である若者は、多分この国ではそれなりの地位の人物なのだろう。
 ならばと依頼を逆手にとって若者を脅す事も一瞬考えてはみたのだが、その背後に控えていた護衛役の青年から滲み出る気配に押され、無言のまま退出してきた。


 欲をかき過ぎると自滅するのが世の常である。何も自分は贅沢な暮らしをしたい訳では無いし、壮大な目的がある訳でも無い。程々に面白おかしく過ごせればそれで良いのだ。
 ――それじゃあな、化物。
 せいぜい大人しく飼って貰うんだな。――裏門を潜り抜けたところで、男は一度だけちらりと背後の建物へと視線を遣る。
 ‥‥しかしその後は二度と振り返る事無く、ひっそりと闇の中へと消えて行った。




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