「華を織る」
06
『雨の中に放り出されてあったのに、まったく濡れておらんでのう』
『ほんにあの子は、本が大好きじゃったから』
「‥‥本当に、あの子は本が好きだから」
小さな声で麻乃は呟く。
何処にいるにしろ、今の亜紀は落ち着いて本が読める様な環境には居ないでしょう。それならば私は、あの子の大好きな本を沢山沢山、準備しておかなくては。
それが今、私に出来る事なのだから。
――だから早く、帰っていらっしゃい。
心の中で呟くと、麻乃は祈る様に目を閉じた。
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