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「華を織る」
06



「ご主人、酒を用意しておいてくれないか?後で取りに来るから」
「あ、先程、部下の方が取りに来られましたよ」
「‥‥そうか、ありがとう」
 主人に気取られない様にいつも通りに、しかし出来る限り急いで矢崎は階段を上る。
 廊下を足音を立てない様に早足で抜け、部屋へと辿り着いた矢崎は、そこで呼吸を整えると静かに扉を叩いた。
「俺だ、開けてくれ」


 すぐさま屋内からはーい!と答える声が聞こえ、やがて扉が細目に開いた。矢崎の姿と周囲には他に誰も居ない事を素早く認めると、大きく開かれる。
「旦那!お帰りなさい!」
「旦那、早く早く!」
「驚かないで下さいよ、何と」
「分かったから、まずは俺を部屋に入れろ!そして扉を早く閉める!」


 一斉に喋り出す部下達を押し殺した声で一喝し、押し遣る様に急いで部屋の中へと滑り込む。音を立てない様にそっと扉を閉めると、矢崎は帽子を取りながら振り返った。
「まったく、誰かに見付かったらどうす‥‥っ」
 言いながら部屋の中を見渡した矢崎の視線は、窓際に置かれた椅子の上で止まる。



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あきゅろす。
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