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「華を織る」
02


「宮古?」
 不意に背後から名前を呼ばれ、宮古は慌てて振り返った。
「やっぱり此処に居たんだ」
「‥‥義兄さん」
 柔和な瞳に眼鏡の向こうから微笑まれ、宮古も小さく笑みを浮かべる。
「出掛ける挨拶、してたの?」
「はい」


 頷く宮古へ清水もそうかと頷き返すと、そのまま横へと並び立った。下げてきた手提げ袋の中から、これまた姉の好物だった林檎を取り出すと、そっと墓石の前へ置く。
「それじゃあ、俺は」
 夫婦の会話を横で聞く様な野暮はしたくない――そのまま清水と入れ替わる様に墓石の前から退出しようとした宮古だったが、ちょっと待ってと清水に呼び止められた。
「ちょっと待って、宮古に渡す物があって」
「何ですか?」


 不思議そうな表情を浮かべる宮古に対し、清水は持参した手提げ袋から小さな包みを取り出す。
「?何ですか、これ」
「ほら、前にうちで見せただろ?矢尻部分だけを飛ばす装置」
 一瞬何の事だか分からずに首を傾げた宮古だったが、やがて思い出した様にはっと顔を上げた。
「ああ、あれですか」


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