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「華を織る」
01 ◆3◆
◆3◆


――姉さん。


 傍らに小振りの常緑樹が植えられた墓石の前。
 何時もの様に故人の好物である杏子酒の小瓶を抱えた宮古は、生前の姉の笑顔を思い浮かべながら心の中でそっと呼びかけた。


――華剣から頼まれ事をしてさ。ちょっと、出掛けて来るね。


 語り掛けながら、宮古は「お願いがあるんだ」と言われた時の、桜木のこの上ない真剣な表情を思い返す。
 桜木とは華剣・副官の間柄になる前からの付き合いだが、考えてみるとこんな風に個人的な頼み事をされたのは初めてかもしれない。
 自身の呑気な言動――そして宮古の容赦無い小言――の所為で、歴代の錚々たる華剣と比べるとあまり華剣らしからぬ桜木だが、それでも生活の大半を華剣として過ごしていた。
 個人としての時間は殆ど無く、また今後も華剣である限りはそうであろうと思っていたのだが。


――大事な用事、なんだって。


 「華剣」である事を一旦止め、暫くの間「桜木」に戻る事を彼は仲間達に願い出、そして了承された。
 大事な用を、果たす為に。
 大事な人を、迎えに行く為に――


――だから姉さん、俺も‥‥

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