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「華を織る」
07



 ――俺の部屋より、よっぽど良い物を使ってるなあ。
 場違いながらもそんな事を思いながら再び室内を一周してみる。扉らしき箇所まで辿り着き取っ手を弄ってみたが、案の定、鍵は掛かっていた。
「‥‥やっぱり掛かってる、か」
 まあ、そうだよね。
 俺、連れ去られて来たんだし。
 むしろ鍵が開いている方が、何かの罠なんじゃないかって思うよね。


 部屋の中央で、うんうんと一人頷く亜紀。どうやら想像の範囲を超えた出来事に直面しているせいで、感覚が麻痺してしまっているらしい。様々な疑問は心の中で渦巻いてはいるが、不思議と怖さは感じなかった。
 だって、まるで冒険小説の主人公みたいじゃないか。小さな工房の織師でいたって平凡な自分が、巻き込まれる様な事じゃない。
 もしかして俺、夢でも見てるんじゃないかなあ‥‥?そんな思いすら湧いて出てきた亜紀は、無意識のうちに手を自身の首筋へと当てていた。その拍子に肘が近くにあった水差しに当たってしまい、ことりと音を立ててしまう。


『おい、目を覚ました様だぞ』
『ちょっと報告してくる』


「、」
 あ、しまった。と思ったがもう遅い。
 扉の向こう側から複数人の声がし、やがて足音が一つ足早に遠ざかっていく。
 一定の速度、等間隔の歩幅。あれは、訓練された人間の立てる足音。
 そして衣擦れの音に混じって聞こえる、金属製の音。あれはきっと剣の音。
 ‥‥と言う事は、扉の向こうに居るのは多分、兵士。


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あきゅろす。
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