「華を織る」
08
「なあ、」
「あの、」
桜木が意を決して宮古へと声を掛ける。時を同じくして宮古もまた書類から顔を上げると、桜木の方へと振り向いていた。
ほぼ同時に発する事となった声に、二人は一瞬たじろいだ様に黙り込む。しかし再び腹を決めると、言葉を紡いだ。
「お願いがあるんだが、」
「お聞きしたい事があるのですが、」
「「‥‥」」
またもや意図せぬままに被ってしまった声に、上司と部下は思わず顔を見合わせ――そして、堪らず吹き出した。
「なんだよ宮古、聞きたい事って」
「華剣こそなんですか、お願いって」
互いに笑い合う事で肩の力が抜け、先程から妙な緊張感の漂っていた二人の間の空気も、ようやく解け始める。
そう言えば亜紀の事件があってから、まともに宮古の顔を見ていなかったな‥‥ここ暫く自分が酷く動揺していた事に今更ながらに気付き、内心苦笑する桜木だった。
一頻り笑った後、桜木はそれじゃあ俺から言うぞと改めて宮古の方へと向き直った。
「――実はお願いがあるんだ、宮古」
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