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「華を織る」
06


 目下桜木の心の中を占めているのは、無論、宮古経由で受け取った矢崎からの書状の中身だった。
 簡単な挨拶と近況報告から始まり、黒水晶の欠片が光った旨の報告、そして華剣殿に差し上げた欠片も光ったのではないか?という確認。
 そして、矢崎が桜木へ譲った様に彼の祖先達も誰かに渡している。それらも光ったのではないか、騒ぎにならなければ良いのだが、という懸念。
 最後は、しばらく城下に滞在するので何か知っている事があればがあれば教えて欲しい、という依頼で締めくくられていた。


『玉城が西風に占領されていた時なんですけどね。そこで興味津々に話を聞く少年がいて、爺さんは嬉しそうに渡していましたよ』
『幼い頃、一時住んでいたことがありましてね。些か懐かしく感じまして』


 ‥‥もしかして。書類の決裁欄に署名を書き込みながら、桜木は考える。
 峠での捕物の後に設けた宴で、矢崎が酒の肴にと語ったもう一つの織子の物語。矢崎が桜木へと黒水晶の欠片を譲ってくれたのと同様に、彼の祖父もまた話を熱心に聴いてくれた一人の少年へと手渡していたらしい。
 そして、峠で出会った西風の若き将軍・虹。彼は幼い頃、玉城に住んでいたと言う。



 もしかして。
 矢崎の祖父が渡した相手と言うのは、幼い頃の虹だったのではないか?






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あきゅろす。
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