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「華を織る」
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 東雲国主である天帝の住まう、都城――
 堅牢な高い塀に囲まれた彼の地は、警備もさぞや厳重であるだろうと思われがちだが、正面の大門から続く大広場や幾つかの庭園、そして国立図書館周辺までなら、余程怪しい動きをしない限り誰でも自由に立ち入る事が可能である。
 無論、各大臣達の大小様々な館が立ち並ぶ行政区域には許可を得た者以外は立ち入り禁止であるし、天帝が日常生活を送る私邸宮や執務宮のある最奥に到っては、常日頃から厳戒態勢が取られている。
 しかし雑多な職種の人々が行き交う大門付近に佇み、吹き抜ける心地好い風を頬に受けながら、伸びやかな午後の光を受けて明るく輝く都城全体を眺めていると、現天帝の親しみ易く開放的な人柄が思い起こされるのであった。


「うん、やっぱり都城は良いねえ」
 帽子の幅広の鍔を指先で押し上げると、大門の脇に佇んだ矢崎はゆったりと都城を見上げた。
「西風はいつ行っても殺伐としているし、北雪は綺麗過ぎてちょっと近寄り難い、反対に南波は庶民的過ぎる‥‥やっぱり東雲ぐらいが丁度良いよな」
 うんうんと一人で納得した様に頷くと、まあでもと言い訳の様に続けて呟く。
「俺が東雲出身だから、贔屓目に見ているって事もあるんだろうなあ」
 何だかんだ言いながら、どこの国であれ生まれ故郷がやっぱり一番だよな。再び納得しながら頷いた矢崎は、さてと周囲を見渡した。


「さて、どうするかな」
 皆それぞれ果たすべき目的があるのだろう、大広場に三々五々集う老若男女を眺めながら、ふうむと思案気な表情を作る。
「詰所まで行くのも、ちょっとなあ。天下の華剣様を、怪しい旅商人なんぞが尋ねて行って良いものか」
 何処かに剣士殿でも歩いていないもんかねえ。呟きながらもう一度ぐるりと大広場を見渡してみるが、それなりの規模を誇る都城である、少数精鋭の剣士達がそうそう簡単に見つかるものでもない。
「‥‥仕方ない、少し探してみるとするか」


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あきゅろす。
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