「華を織る」
02
しかし。
神話はそこで終わらない。
『何故だ。何故このような事に』
神は嘆く。
地上の混乱に。
招かれた悲劇に。
『かような為に、汝に力を授けたのではないぞ』
織師は答えない。
常に柔らかな光を湛えていた瞳は、二度と開く事はなく。
奇跡の布を生み出した指は、二度と機を織る事もない。
濡れ細り。
切り裂かれ。
襤褸布のように冷たくなった織師の身体を、神は抱き上げる。
そして呆然と佇む人々の前に、一振りの水晶の剣を突き刺した。
『――この者は我が元に。代わりに汝等にはこれを与えよう』
それほどに同胞を傷つけたいのならば。
それほどに無益な争いを望むのならば。
この地を肥やす力より、破壊する力を欲するのならば。
良かろう。
我はその手立てを――武器を――汝等に与えようぞ。
『子々孫々に渡り、争い続けるが良い』
我が愛でた者を殺めた。
これは報い。
そして人々は、武器を与えられ。
永遠に争い続ける罪を背負う事になったのです。
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