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「華を織る」
05


 押し殺した様な低い声と共に、男は箒を力任せに奪い取った。そのまま手の届かない場所まで弾き飛ばしてしまう。
 そしてがら空きとなった亜紀の正面へと向き直ると、亜紀の細い首筋へと義手を一息に振り下ろす。
 がっ、と言うくぐもった嫌な音。糸が切れた様に、亜紀の身体がどさりと地面に倒れ込む。
「――この化物が」
 小雨に濡れ光る石畳の上に横たわる亜紀を見下ろしながら、男は微かに顔を歪ませ吐き捨てるように言った。こいつの所為で、俺は、俺の仲間は――


「亜紀!」
「亜紀、どこじゃ!!」
 佇む男の耳へ、裏道の向こう側から老人達の声が微かに響いてくる。
 亜紀の身体を引き摺り上げようと左腕を伸ばし掛けた男だったが、考え直し義手の指先に襟足を引っ掛けると、細い脇道へと素早く引き摺り込む。


「どこへ行った?」
「大通りかもしれぬ」
「早う探さねば!」
「亜紀ー!」
 工房にいる他の織師達も駆け付けたのだろう、複数の乱れた足音が男の潜む脇道へと近づき、やがて遠ざかって行く。
「‥‥」
 足音が完全に消えた事を確かめた後、男は改めて義手である右腕に亜紀の腰を掬い上げた。大通りとは正反対の方へ静かに歩き出す。



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あきゅろす。
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