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「華を織る」
07



「まさか亜紀が、そんな‥‥」
 何を言えば良いのが分からず、桜木は意味の無い言葉しか呟けない。
 今更ながらに慌てて麻乃の様子を伺うが、まだ隣室から帰ってくる気配は無かった。
 覗き見をしてしまった様な罪悪感と、亜紀を巡る思いも寄らなかった事件に、桜木は足元がぐらりと傾く様な感覚を覚える。取り敢えず新聞を机上へ戻すと、何とか元の椅子へと辿り着いた。
 どさりと深く腰を下ろす。


「‥‥」
 そのまま両手で頭を抱え掛け‥‥伸ばした指先に額に巻いた布が当たり、桜木は思わず目を見開いた。
 ――そう言えば。
 あの時。
 この布が光ったあの時。
 白夜は何と言っていたか。



『事件を調べると良い、桜木。城下で起こった事件を』
『俺とお前が初めて出会った、丁度あの頃の‥‥』



 そうだ。
 この事件が起きた時。西風との小競り合いが続いていた時。
 俺が白夜と初めて出会ったのは、丁度この頃だったではないか。
 白夜が言っていたのは、もしかしてこの事件なのでは?
 しかしそれならば、何故。
 ‥‥何故?



「お待たせしました、桜木。‥‥桜木?」
 その後、麻乃が淹れ立ての翠茶を運んで来るまで。
 桜木は椅子に深く腰掛けた姿勢のまま、考えに沈んでいた。




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