「華を織る」
03
後悔、哀惜、懺悔、痛嘆。
聞いているだけで胸が痛くなる様な声を、何故俺は忘れてしまえたのだろう?
あんなにも強い想いを、俺は受け止めた筈だったのに。その想いに応えた筈だったのに。
――そうだ。そうだよ。
証拠も理屈も何もない、唯の直感。
しかし己の勘は間違っていないと、桜木は確信を持って頷いた。
こいつだ。
あの夢の中で聞いたのは、こいつの声だ。
『次こそは、護る』
『次こそは、必ず』
『だからどうか、貴方は‥‥』
頷いた桜木に安堵したかの様に、声が穏やかさを帯びる。
暗闇は光明へ。向かい風は追い風へ。慟哭は希望へ。
全てを託す、暖かな風が背中を押す――
「‥‥」
分かったよ、と桜木は絵に向かって心の中で話しかけた。
分かった、分かったよ。
俺が護るから。
お前が護れなかった分、俺が俺の大事な人を護るから。
だからもう、嘆かなくて良い。
責めなくて良い。
悲しい想いに囚われなくても良い‥‥
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