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「華を織る」
06



 そうだったのねえ、とちらりと後ろを振り返りながら、帝妃は呟く。
 まだ先程の場所から動かずに、こちらを見送る様に佇んでいる桜木の姿を見付け、そうだったのねえと今度は小さく微笑んだ。
 ――あらまあ。どうやら訳ありの様ね、お二人さん。
「そう言えば亜紀、四剣の中で一番のお気に入りは華剣様だったわね?」
「‥‥はい」
 少し躊躇った後、こくりと頷いた亜紀の頬がどことなく赤い。
「あら、じゃあもう少し、お話すれば良かったかしら?」
「い、いえ!だ、大丈夫です!!それより早く行きましょう!!」


 言うや否や、だだだだっと先導する様に早足になる亜紀の後ろ姿を眺めながら、若いって良いわねえと愉しげに微笑みつつも。
 ――でも、なんで名前は言っちゃいけないのかしら?
 不思議よねえ、と首を傾げる帝妃だった。






「‥‥」
 午後の陽射しを浴びながらじっと佇んでいた桜木だったが、三人の後ろ姿が見えなくなった所で改めて歩き出す。
 ここ数日は愛剣の様子を職人に見て貰う期間であり、また装備品一式の点検もある為、普段は身軽な桜木も正装を余儀無くされていたのだか、どうやらそれが幸と出たらしい。よもや華剣として、亜紀に遭遇する事になるとは。



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