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「華を織る」
05



「‥‥」
 ところで一方の桜木はと言うと、すっかり困り切っていた。
 ――さて、どうしよう。
 全てを亜紀に話すとは決めてはいたが、よもやこんな場所で『華剣』として出会ってしまうとは想定もしていなかった。
 出来れば誰も居ない静かな処で、最初からきちんと説明したいのに。
 もし口を開いたならば、その瞬間、亜紀に正体がばれてしまう。しかし、いつまでも黙っていては不審がられてしまう。
 現に先程から綾菜殿があの優しげな表情のまま、此方を心配そうにじっと伺っているではないか。


「――帝妃様、そろそろ」
 どうやら桜木の窮地を察したらしい、綾菜がさり気無く助け船を出す。
「そうね、館長も待ってらっしゃるし。では華剣様、私達はここで」
 帝妃も何となく微妙な空気を感じ取ったらしく、あっさりと綾菜の促しに同意する。
「また今度、ゆっくりお会いしましょう」
「失礼します、華剣様」
 ひらりと手を振る帝妃と、たおやかに頭を下げる綾菜に、桜木もまたお詫びの気持ちを込めて深く一礼する。


「あ、では、華剣様、私も失礼します!」
 女性陣が動き出した事で、我に返ったらしい。亜紀もまた慌てて一礼すると、二人の後を追う形で歩き出す。
「‥‥ねえ亜紀、もしかして華剣様とお知り合いだったの?」
 やがて桜木との距離が幾らか開いた処で、そっと帝妃は亜紀の方へと顔を寄せると小さく囁いた。
「あ、いえ、そう言う訳では‥‥ただ、以前一度、道案内をして頂いた事があって」
「あら、そうなの」
「ええ。‥‥その、手を引いて頂いて」
「‥‥あらあら」



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あきゅろす。
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