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「華を織る」
03


 鉄を打った頑丈な長靴。
 足音に合わせて微かに響く、鋼の音。


 ‥‥もしかして。



「あら、華剣様もいらっしゃったんですね」
「!」
 明るく響く帝妃の声に、再び亜紀の足はその場に止まった。
 先程の職人に剣の様子を見て貰う為だろう、詰所の方向へと向かっていた足音は目的を変え、此方へ近付いてきた。
「‥‥」
 ――やっぱり、華剣様だ。
 たった一度きりの出会いを覚えていた自分の耳に、我ながら亜紀は驚く。それと同時に込み上げてきたのは、気まずさと嬉しさ。そして自然と速くなってゆく鼓動。


 どうしよう。
 華剣様だ。
 俺の事、覚えてくれているだろうか。
 もう忘れてしまっているだろうか。
 もし無礼な奴だと怒っていたらどうしよう。
 どうしよう‥‥


「華剣様、こちら城下の工房に所属する織師の亜紀。若いのにとっても良い腕なのよ」
 静かに動揺している亜紀の様子には気付かずに、帝妃はてきぱきと二人を引き合わせようとする。流石の帝妃も、二人が以前に出会っている――なおも言えば恋人同士である――とは、思いも寄らないらしい。
「あのね亜紀、驚かないでね。こちらは四剣が一人、華剣でらっしゃる‥‥」
 桜木様、と言い掛けた帝妃は、その瞬間、桜木が黙したまま必死の形相で両腕を振り回している姿に気付き、思わず目を丸くした。どうやらそれ以上、言わないで欲しいと言いたいらしい。



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あきゅろす。
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