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「華を織る」
03


「来るな宮古!」
「しかし華剣、」
「いいから!」
「華剣‥‥?」
 思わぬ桜木の拒絶の声に立ち止まる宮古。その困惑気味の声に、白夜が微かに困ったような表情を浮かべた。
「‥‥ああ、宮古殿が来てしまったか」
「それがどうした」
「多勢に無勢は、性に合わないのでね」
 不意に力を緩めた白夜は、巧みに身体を引きながら剣を収める。そのままあっさりと身を翻した。


「白夜、まだ話はっ」
 終わっていない――引き止め掛けた桜木だったが、既に白夜は背後の岩陰に身を躍らせた後だった。慌てて覗き込むが、その姿は掻き消えている。
「華剣、」
 漸く桜木の元へと駆け寄る宮古。しかしその顔には常と違う上司の雰囲気を慮る様に、気遣わしげな表情が浮かべられている。
「何かありましたか?白夜隊長と本気で切り結ぶなんて」
「‥‥本気で遣り合ったらおかしいか?」


 宮古の問い掛けに、逆に桜木は緊張の解けない表情のまま呟く様に問いかけた。
「あいつは西風の人間だ。『西風の隊長』と『東雲の華剣』が剣を交えて、何かおかしいか?」
「いえ、そんな事はありませんが‥‥」
 慌てて首を横に振る宮古。しかし言葉に反して、その目は戸惑いに溢れている。「――すみません、お二人は何時も戦いを避けている様に感じていたので」
「‥‥鋭いね、宮古」
「え?」
「そういうお前だって、わざと外しただろう?随分と優しい矢だったなあ、さっきのは」



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あきゅろす。
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