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「華を織る」
08


「光って、たよな?」
「うん、光ってた」
「‥‥って事は、」
 再び部下達は一斉に矢崎を見詰める。しばらく言葉が出ない矢崎だったが、漸く顔を上げると大きな溜息を吐いた。「――ああ、爺さんは耄碌していなかったのかもしれない」
 矢崎の言葉に、おおおおと声を上げる部下達。
「旦那の家に伝わる話、嘘じゃなかったんですね!」
「凄いじゃないですか、爺様は正しかったんだ!」
「じゃあじゃあ、織子の布が使われたって事ですかい?」


「いや、ちょっと待て」
 大騒ぎをする部下達に反し、矢崎は慎重そうな姿勢を崩そうとはしなかった。麻袋の中から黒水晶を幾つか取り出すと、掌の上で転がしながら考え込む。
 ‥‥この黒水晶が光っていたのは確かだ、皆で見たから間違いない。しかし何故?そして今頃になって?
 爺様の言っていた事を全部信じれば辻褄は合うが、しかしそう簡単に済ませてしまって良いのか?


「?旦那?」
「どうしました?」
「なんか難しい顔、してますよ」
「‥‥なあ、俺達はこの商品が捌けたら、南波へ行く予定だったよな?」
 やがて顔を上げた矢崎は、ぐるりと部下達の顔を見渡した。
「ええ、北雪で仕入れて、それから南波でしたよね」
「その後は東雲って話でしたが」
「それがどうかしました?」


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