「華を織る」
05
◆◆◆◆◆
天井に開いた窓から陽光の差し込む部屋の中央で、黒衣を纏った若き神官が一人静かに佇んでいた。
彼が見詰める先にあるのは、透き通る水晶で創られた一振りの剣である。その水晶の剣から今まさに、光が失われようとしていた。
「‥‥」
元より美しく輝いている剣ではある。しかしそれは陽の光を浴びてこその事、身の内から溢れる様な光り方をしたのは、彼が見る限りではこれが始めだった。
「‥‥」
最後の一筋の光が、儚くも消え去る。
部屋が常通りの穏やかな陽光で満たされ出したの確認した後、彼は懐からそっと紙切れを取り出した。随分と古いのだろう、所々破れかけ印字も薄れているが、彼は暫くの間その紙切れをじっと見詰め‥‥やがて、意を決した様に顔を上げた。
「おお、浅葱」
剣の前から退出し早足で廊下を歩いている所へ、彼を知る人物が通りかかった。嬉しそうに彼の名を呼ぶ。
「珍しいな、お前がそんなに急いでいるなんて」
「‥‥」
「どうした、何処へ行くんだ?」
「――外出許可を貰いに」
「ほう、外出するのか、浅葱」
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