「華を織る」 05 顔は相変わらず笑ったまま、しかし白夜の手に握られた剣が下げられる事は無い。 桜木も自身の長剣を改めて握り直し、油断無く身構える。 「何を考えているんだ、お前達は」 「取り立てておかしな事では無いよ。むしろとても真っ当な事だ」 「だからそれは何だ」 「我々が考えているのは、常に西風の事だ、桜木」 躊躇う事無く言い切った白夜の笑みが、同意を求める様に更に深くなる。 ほら桜木、真っ当な事だろう? お前だって東雲の事を考えるだろう? 同じ事なんだ、桜木。 俺達は同じ事をしているだけなんだよ。 「‥‥ああ、そうだな」 白夜の言葉には嘘が無い。そして本心を語っているだけに、桜木は何も言えなかった。 そう、同じなのだ。俺達は同じ事をしているだけなのだ。 ただ、生まれた国が違うだけ。 ただ、それだけ‥‥それだけなのに。 「‥‥」 ここが戦場でなければ‥‥一瞬過った遣りきれない想いを押し殺すと、桜木はもう一度、自身を叱咤する様に剣を握り直した。 [*前][次#] [戻る] |