「華を織る」 04 「、」 ‥‥どれ位の間、探しただろう。 ふと気付くと、桜木は人気の途絶えた一角へと辿り着いていた。 とは言え、剣を交える音や人々の怒声は直ぐ傍から聞こえ、戦場を外れた訳では無い。取り巻く樹木や岩が目隠しの役割を果たし、周囲からはぽかりと死角になっている場所なのだ。 もともと玉城は、国境付近にある山間の鉱脈を護る為に建てられた要塞である。周囲は山に取り囲まれ、桜木達が先程から死守している城門付近も見通しの悪い処が多い。 しかし偶然とは言え、こんな完全に見えなくなる場所があるとは。 後で報告しておかないといけないな‥‥驚き半分興味半分でそう思った桜木であったが、その瞬間、はっと顔を上げた。 ――違う、偶然では無い。 この場所が存在している事自体は偶然なのだろう。しかし、自分がこの場所へ辿り着いた事は、決して偶然では無いのだ。 「‥‥」 何をしに来た? あの二人は玉城の近くで、何を見つけた? ‥‥彼等の目的は、 「――来たな、桜木」 「、」 岩の影からふらりと現れた白夜の姿に、桜木は視線を険しくする。 そんな桜木の警戒心など頓着しない素振りで、白夜は旧知の友人に会った様な愉しげな笑顔を浮かべた。 「おや、今日は宮古殿と一緒では無いのだな」 「‥‥」 「止してくれ桜木。そんなに睨むなよ」 「‥‥白夜」 [*前][次#] [戻る] |