「華を織る」
02
‥‥そして何より。
「いるな」
「いますね」
互いに得物である長剣と弓を構えながら、桜木と宮古は二人で頷き合う。
――白夜がいる。
無駄の無い動き、そして被害を最小限に抑える事を念頭に置いた戦い方。こんな芸当が出来るのは、西風においては白夜以外に有り得ない。
次期国主候補と密かに目されている虹につき従っていた白夜がいるのだ、やはりこちらが主力なのだろう。
「‥‥」
ただ、どうにもおかしいのだ。主力には主力なのだが、どうにも引っ掛かりを感じる。
戦いの裏で、何かを見極めようとしている冷徹な視線を感じるのだ。
そう、この戦いで主眼が置かれているのは勝敗では無い。目に見えない「誰か」の意思に沿う様に、その意思を実現させる為に、この戦いは行われているのではないか?
そんな疑問が拭いきれないのだ。
――何を考えているんだ、西風は。
剣を振るう手を一旦止めると、桜木は心の中で呟く‥‥いや違う。「何を考えているんだ、虹は」か。
きっと今回の侵攻は虹の考案だろう。正攻法で会議に掛けられ、賛成多数で可決された案なのだろうが、その裏には虹の思惑があるに違い無い。
ではその思惑とは何なのか?と考え始めると、途端に桜木の頭の中は霧掛かってしまうのだ。どうにもこうにも虹の考えが読めない。軍を動かしてまでして得たい物が、その目的が分からない。
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