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「華を織る」
04


◆◆◆◆◆


 一方の玉城では、華剣・桜木を筆頭に東の剣の剣士達が西風側の城門を守る為に集結していた。
 西風軍の動きを探る為に放った斥候からは、続々と情報が入る。軍勢は寄り道をする事無く、刻一刻と玉城へ向かっている様だった。
「いよいよだな」
「はい」
 傍らを振り返ると、桜木の直ぐ傍に控えていた宮古が深く頷く。その表情からは軽い緊張感が見て取れるが、動きを妨げる固さは感じられない。良い顔だと桜木は思う。


「‥‥」
 ――さて、俺はどうだろうか。
 翻り、自身について桜木は改めて問い直す。
 正直に言うと、怖い。それは今回に限った事では無く、今までに駆け抜けて来たどの戦場においても、怖くなかった事は無かった。
 特にこの戦闘が始まる直前の時間が嫌だ。堪らない。少しでも気を抜けば、身体が震えそうになる。


 そう、ただ単に戦闘に慣れただけの事なのだ。怖くなくなった訳では無い、自身の恐れを隠すのが巧妙になっただけなのだ。
 心の奥底を暴いてみれば、遠い昔、初めて戦場に赴いた時の、青ざめながら震えていた少年が今でも潜んでいるだろう。


 ‥‥しかし、と桜木は思う。
 俺は決して、この少年を消してしまってはいけない。
 ある程度の恐怖は、常に抱えていなくてはいけない。これを失う事は、生命に繋がる大事な何かを失う事と同じ事だ。恐怖を持たない人間は、必ずどこかで致命的な動きをしてしまう。

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