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「華を織る」
01 ◆3◆
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 可愛い部下を反目する隣国の隊長へと無理矢理押し付けた、非情なる上司・桜木がその頃何処に居たのかと言うと。




 ――これが水晶の剣か。
 天井に開けられた高窓から、柔らかな陽光が射し込む部屋の中央。
 支えも無く身一つでひっそりと佇むのは、何処までも透き通る水晶で創られた一振りの剣である。
 大神殿内の他の部屋とは異なり装飾性を一切排した屋内では、その剣だけが唯一の輝きを放つ存在となっていた。
「‥‥お邪魔します」
 何となく小さく潜めた声を掛けた後、桜木は足音を忍ばせる様にそっと室内へと足を踏入れる。


 普段履いている底の柔らかな革靴とは異なり、正装用の長靴では必要以上に床が硬い音を立てる。
 この靴、結構煩いんだよなあ‥‥心の中で小さく愚痴りながらも、それでも桜木は室内の静寂を壊さない様にゆっくりとした足取りで剣の元へと近付く。




『我々は代々に渡り争い続ける罰を受け、神の赦しがない限り、この大陸が一つの国に戻る事は無いと言われている。』




 ――これがその剣。
 この季の大地を四国に別つ事になったと言われている、神話の中に生きる物。
 高窓から真っ直ぐに降り注ぐ陽光を浴びたその姿は、水晶特有の透明度と相まって現実離れした硬質な光を放っていた。
 ――本当に水晶で出来ているんだな。
 幼い頃から慣れ親しんでいる話ではあるが、実物を見るのは初めての桜木である。
 一年に一度、短夜祭の一夜にのみ一般民にも公開されるこの部屋だが、祭当日は都城城下の警備に忙しく神官自治区を訪れた事は無かった。




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あきゅろす。
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