「華を織る」
07
「さあ亜紀、何時までも立っていないでお座り」
「婆さん、亜紀の朝飯を用意しておくれ!」
「大急ぎでな!」
「さっさと食べて、工房へ行くとしよう」
「はい」
頷いた亜紀は、ありがとうございます、ともう一度心の中で呟きながら頭を下げる。
波瀬も老人達も倒れた原因については何も言わず、体長が良く無かったと言う事で片付けてくれている。それが亜紀には有りがたかった。
今はまだ、見て見ぬ振りをしていて欲しい。
この不器用ながらも優しい人達の気遣いに、もう少しだけ甘えていたかった。
‥‥それにしても、と用意された温かな椀を手に取りながら亜紀は心の中で自問する。
何年も前に克服した筈の傷が今になってぶり返した事については、確かに動揺もあったし落ち込みもした。
しかしそれと同時に、疑問も抱いたのだ。
――何故、今更。
今年は何か、今までの年とは違う出来事があったのだろうか。
真っ先に思い浮かんだのは、やはり新たに出会った都城の人々だ。帝妃、麻乃、館長、衛兵達、そして・・・・
『亜紀?』
明るい桜木の声を思い出し、亜紀は心の中で必死に首を振る。いや、彼等の所為では無い、絶対に無い。それは断言しても良い。‥‥では、他に思い当たる事と言えば。
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