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「華を織る」
05


「え?‥‥ああ、『天の織子』の言い伝えだね。国は違えども同じ話が伝わっていると言う事は、やはりこの四国は元々は一つの国だったのだろう」
 漏れ聞こえた宮古の声に、白夜もまた自身に言い聞かせるような小さな声で呟く。
「宮古殿はどう思う?何時の日か、四国が一つの国になる事は有るだろうか」
「そうですね。一つにならないまでも、争いは無くなれば良いと思います‥‥いえ、無くすべきです」
「確かに。軍備に裂く金額が減れば、その分、他の政策へ回す事が出来るからな。国も力を蓄えられる」
「白夜隊長のお考えは?一つの国になると思いますか?」
「そうだな。――それが、この大陸の本来の姿であるならば」


 はっきりと言い切った白夜の声に秘められた強い意志を感じ、宮古は思わずその顔を見詰める。
 その視線は宮古を通り越し遥か遠く、自国である西風へと向けられている様だった。
「‥‥白夜隊長は何故、虹将軍の下に?」
 問い掛けた後で、これは失言だったかと宮古は些か後悔する。案の定、白夜は苦笑交じりの小さな笑い声を上げた。
「宮古殿。それは『何故あんな若造に嬉々として従うのか?』と言う意味かな」
「いえ、決してその様な意味では、」
「私は我が国の、西風の発展を切に願っている。あの方は、その望みを託すに値すると確信したからだ」


 そして宮古へ真っ直ぐに向き直ると、まるで宣誓でもするかの様に右手を自身の胸へと当てながら微笑んだ。
「私は西風がとても大切なんだ‥‥貴方達が東雲を大切に思うのと同じ様にね」



 あの国の為ならば。
 私は何だってしよう。



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あきゅろす。
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