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「華を織る」
04



 ――また余計な事をっ、俺はっ。
 再び墓穴を掘ってしまった宮古は、心の中で自分自身を罵倒する。
 だから厭なのだ、この人と話をするのは。言わなくても良い事までつい言わされてしまう。そしてそれを聞き逃してはくれない。決して。むしろ良い機会だとばかりに立ち入って来ようとする。
 あの人とは‥‥義兄さんとは正反対だ。


「姉上にも一度、お目に掛かりたいものだ」
「無理ですよ。もう、亡くなりましたから」
 わざと素っ気なく言い放ち、幾らか溜飲を下げる。どうだ、これならもう何も言えないだろう‥‥そう思いながら白夜へと視線を向けると。
「それは、‥‥大変失礼な事を申し上げた」
「、」
 自分の不用意な発言を心底後悔しているらしい、痛ましそうに表情を曇らせた白夜の顔を見てしまい、宮古は慌てて視線を外した。


 ――何故、そんな顔をする。
 その手で、その剣で。我が国の剣士達を何人も殺めてきたくせに。一度も見た事の無い女性一人に対して、何故そんなにも悲しげな表情をする?
 凄惨な戦いをするように命令してきた口が、一人の死に対して何故そんなにも動揺をし、言葉を失う?
 ‥‥ああしかし、それを言うなら自分も同じか。自嘲気味に宮古は内心頷く。
 この手で、この弓で。何人もの西風の兵士達へと矢を射掛けてきたのだから。
 その同じ手で俺も祈っているじゃないか。姉さん、どうぞ安らかにお眠りください‥‥


「‥‥『永遠に争い続ける罪』、か」
 先日、麻乃から借りた児童書の一節を思い出し、囁く様に宮古は呟く。
 確かに、これは罪なのかもしれない。
 一方では身内の死を悼み、また一方では敵の命を奪い。そして命を奪われた者の身内はその死を悼み、再び此方の命を狙う。
 この連鎖を断ち切る事など‥‥この罪が許される時が来る事など、自分達にあるのだろうか‥‥?


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