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「華を織る」
05

「やはり虹将軍か」
「ええ」
 引き続き小声で囁きながらも、そっと目立たない位置へと移動し気配を消そうと試みる桜木と宮古。
 しかし彼等の努力は徒労に終わったらしく、ぐるりと東雲の一団を見渡した虹は、目敏く桜木を見つけると「華剣殿!」と嬉しそうな声を上げた。
「お久し振りです、華剣殿」
 にこやかな笑顔を浮かべながら近寄って来る虹の後ろには、その背後を守るかの様に付き従う白夜の姿。
「・・・・」


――ああ、面倒臭い。
 桜木と宮古、それぞれ心の内で呟きながらも、心を無にして黙礼する。
 このまま余計な事を言わずにさっさと会議の間へ――もしくは大神殿の外へ――向かってくれ、と念じていたのだが、またしても彼等の願いは聞き届けられなかった様だった。
「おや?華剣殿、以前とは違う護布ですね」
 此処に巻いている布、と自身の額を指差しながら虹は興味津々と言った風に桜木の顔を覗き込む。
「以前のもお似合いでしたが、今度の布はまた一段と華剣殿の髪色に合ってらっしゃる」


 このままだんまりを決め込みたい桜木だったが、衆人環視の中で西風の将軍を無視する程、桜木は若くも無鉄砲でも無かった。仕方無く重い口を開く。
「・・・・お褒め頂きありがとうございます、虹将軍。知り合いの織師から貰いまして」
「そうなんですか。本当にとても良く織られています。残念ながら我が西風には、その様に高い技術はまだありません。・・・・流石は東雲ですね、陛下」
 後半は振り返り天帝へ向かって声を投げ掛けると、虹はもう一度桜木へと向き直った。にこりと微笑み掛ける。


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あきゅろす。
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