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「華を織る」
04

 前を行く天帝達に聞こえない様に小声で囁きながらも、宮古の瞳は大神殿内の装飾を探す事に忙しい。
 堅物部下の常に無いはしゃぎ方に、桜木も何となく心を浮き立たせていたのだが。
――・・・・。
 ふと首筋辺りに視線を感じ、桜木は宮古と共に廊下を眺める振りをしながらそっと振り返った。
 途端、後ろを歩く浅葱の瞳とまともにぶつかる。


「・・・・」
 早朝の湖面の様な、物言わぬ静けさを湛えた瞳。その中にちらりとだが微かな光が揺れた。
 天帝と巧みに会話を続けている蘇芳に対し、この神官の声をまだ一度も聞いていない事にふと桜木は気付く。
 折角だし何か質問でもしてみようか・・・・、桜木が口を開こうと思った時。




「ああ、東雲の方々も到着されたのですね」




 前方から声が届いたのと同時に一同の足が止まり、桜木も視線を転じた。――この声は。
「御初に御目にかかります、陛下。私は西風の虹と申します」
 よく通る歯切れの良い声、涼しやかに整った顔立ちに浮ぶ微笑、そして将軍職を示す白銀色の腕章。
 どうやら桜木達より少し早く到着していたらしい、控えの間と思しき部屋から出てきた一団の先頭で、西風の若き将軍が優雅な礼をしていた。
「初めまして、虹将軍。御逢いできて光栄です」
 すかさず天帝も敬意を込めた答礼で返す・・・・平和目的の会議とは言え、この時から既に各国間の水面下の攻防は始まっているのだ。一挙手一投足に気を配らなければならない。



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