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「華を織る」
02



『我々は代々に渡り争い続ける罰を受け、神の赦しがない限り、この大陸が一つの国に戻る事は無いと言われている』




「・・・・争い続ける罰、か」
「?何か言いました?華剣」
 小さく呟いた声が聞こえたらしい、隣に並ぶ宮古が不思議そうに桜木の方を振り返る。
「いや、この前、矢崎が言っていた、」
 事を思い出してね、と続けようとした桜木だったが、丁度その時、目の前の東雲門が古めかしい外観に違わず重厚な軋み音を響かせながら、ゆっくりと開き始めた。
「、」
 常日頃の習性から思わず腰へと手を伸ばす桜木。しかし馴染んだ剣柄が指先に触れる事は無く、空を切るだけだった。隣で同じ様に背中へと腕を回しかけ、思い出した様に動きを止めた宮古と目が合う。


 ああそうだ、と桜木は内心苦笑する。この自治区へ入る時に、全ての武器は神官へ預けてしまったんだ。
 神から与えられた『争い続ける罰』への戒めを込め、神官自治区では一切の武器の持ち込み、及び殺傷行為は固く禁じられている。
 例え国主を守護する者と言えど例外は認められず、この地域では全ての人間が丸腰で過ごさねばならないのだ・・・・無論、預けた武器は担当の神官によって厳重に管理され、再び自治区を出る際には丁重に返却されるのだが。
 それでも常に傍に有る筈の物が手の届かない場所にあると言うのは、何とも心許無いものだ。目を合わせたまま宮古と小さく頷き合うと、再び桜木は開ききった門へと視線を向けた。


「――ようこそお越し下さいました。東雲の方々」
 門の内側に佇んでいたのは、黒衣の神官服を纏った二人の男。
 そのうち幅広の肩から赤い飾り紐を下げた体格の良い神官が、明るい笑みを浮かべると深く一礼した。
「私は蘇芳と申します。こちらは浅葱。今年の四国会議の接待役を勤めさせて頂きます」
「・・・・」
 浅葱と呼ばれたもう一人の神官は、黙したまま静かに頭を下げる。青い飾り紐を吊るした神官服に包まれた身体は、蘇芳とは対照的にほっそりと小柄だ。


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