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「華を織る」
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 『――この者は我が元に。代わりに汝等にはこれを与えよう』
 少年の身体を抱き上げた神は、呆然と佇む人々に向け、一振りの水晶の剣をかざした。


 それほどに同胞を傷つけたいのならば。
 それほどに無益な争いを望むのならば。
 この地を肥やす力より、破壊する力を欲するのならば。
 良かろう。
 我はその手立てを――武器を――汝等に与えようぞ。


 『子々孫々に渡り、争い続けるが良い』
 神により突き立てられた剣は、大地に亀裂を生み、この国を四つに引き裂いた。






――やがてこの大地には四つの国が立ち、神の降り立った城跡は、祈りを捧げる神官達の自治区となった。
 国境の峠で出会った旅商人・矢崎の語り口調を思い出しながら、桜木はぴたりと閉ざされている門を見上げた。
 季の大地のほぼ中央に位置する神官自治区。四国何れの国からも独立しており、その名の通り神官達による完全自治が敷かれている地区だ。
 その自治区の更に中央――つまり季の大地の真中――に聳えるのが、四国各地に散ばる神殿の総本山たる大神殿なのである。


 天帝を頭とする桜木達東雲の一団が見上げているのは、この大神殿の東面に設けられた「東雲門」。
 大神殿には東西南北、各国の名前を冠した門が計四つあり、一年に一度、四国会議へ出席する各国代表団が入殿する時にのみ開かれるのが通例となっていた。
 四国に別れた季の大地がせめて心だけでも一つにし、神への祈りを伝える為に一切の戦闘及び武器の使用を禁ずる十日間。この休戦期間内に神官長の名のもと各国代表を招いて行われるのが、平和目的の四国会議である。
 そして太陽が最も高く昇り、夜が最も短くなる最終日には、夜を徹して行われる短夜祭が控えているのだ。



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