「華を織る」
01 ◆5◆
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雨の様に降り注ぐ弓矢の応酬が続く中、南波の警備船は恐ろしい迄の正確さでぴたりと不審船の横腹に張り付いた。
「今だっ!橋を架けろ!」
船長の声で船縁に身を潜めていた船員が、仲間達から援護を受けながら果敢に板橋を渡す。
「船長!架かりま‥‥」
板橋の四隅に付いた金具を船縁にがっちりと食い込ませ、容易には外されない事を確認した船員は、振り向き声を張り上げかけ‥‥自分の方へと突進して来る男の姿に思わず絶句した。
「御苦労!」
慌てて我が身を庇う船員の横をすり抜け、今まさに架かったばかりの橋へと身軽に飛び乗ったのは、小柄な一人の男。
なびく銀髪を南波警備船団の守護色である緋色の布で包み、紺に近い濃緑色の瞳を鋭く光らせた男は、足場の悪い板橋を駆け抜けながら両手ですらりと双剣を抜き放った。
「あーあ。一番乗り、また取られた」
「船長、速すぎっすよ」
「おっと、矢に気を付けろ」
「足元にもな」
同じく緋色の布で銀髪を束ねた船員達が、口々に軽口を交わしつつ放たれる矢を俊敏にかいくぐりながら、先を争う様に板橋を渡って行く。無論、落ちるどころかよろめく者など一人も居ない。
「我々は南波の警備船だ!警告に従い武装を解除しろ!」
瞬く間に不審船上へと降り立つと、男はこの小柄な身体の何処からと思う程の大音声で叫ぶ。
間髪入れずに男の左右を固めた船員達も、或いは長剣、或いは双剣を手に隙の無い構えを取った。
「うるせぇ!出ていけ!」
荒々しい怒声と共に刃を打ち込まれた男は、しかし臆する様子も無く一振りで相手の剣を海へと弾き落とす。
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