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「華を織る」
03



「行っちゃったな」
「どれぐらいかかるんだろう」
「さあな、問題が無ければすぐじゃないのか」
 『良い機会だから近くで見てこい』と各々の持ち場から甲板へと戻された候補生達だったが、流石に全員をぞろぞろと引き連れて行く訳にはいかなかったらしい。
 一人が代表して調査に同行した後は、連中が戻って来るまで暫し待機となったのである。


「北雪の貨物船かあ。面白い積み荷がありそうだな」
「案外普通の鉱物類かもしれないぞ」
「しっかし停船の旗が揚がった時は何が起こるのかと思ったけど、結構あっさりと進むもんだな」




「――想像と違ったか?」




「っ、」
 不意に背後から声を掛けられ、候補生達は慌てて振り返った。
 笑みを湛えた明るい翠色の瞳に、一斉に背筋を伸ばす。
「舞剣様、」
「海賊退治だ攻防戦だと言えば威勢は良いが、実際にはこういった一般船の立入調査が大半だ。今回はすんなりと通されたが、あからさまに嫌な顔をされる事も少なくない‥‥面倒で地味な仕事だよ」



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あきゅろす。
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