「華を織る」
02
「舞剣様!この坊主が見付けたんですぜ」
「わっ、」
不意に船員からぐいっと肩を掴まれると眼下へ押し出されるように引っ張られ、少年は慌てて手摺にしがみついた。
船に乗り込んでから幾日か経ったとは言え、流石にまだこの高さには慣れていない。甲板のあまりの遠さに、ぐらりと頭の中が揺れた。
「おいおい、落っことすんじゃないぞ」
「おっとこいつはすまねえ。なあに、坊主が軽過ぎるんでさあ」
「はは、確かにな‥‥よく見付けたな」
「、はいっ」
目を細めた舞剣から労いの声を投げられ、少年は手摺を掴みながらも慌てて姿勢を正す。
「お手柄だなあ、おい」
些か乱暴な手つきながらも船員からも頭を撫でられて、照れくさそうに笑う少年であった。
「お務めご苦労様です」
「いえこちらこそ、ご協力感謝します」
北雪人特有の薄水色の瞳をした長身の貨物船の船長と型通りの挨拶を交わした後――もしこれが南波国同士の遣り取りならば、豪快な抱擁から始まるのだが――、調査表を片手に舞剣副官ら数人が貨物船へと乗り込むのを、少年は仲間達と共にじっと見詰めていた。
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